教員・職員の声

名市大の英語教育(旧 人間科学科・宮田学 名誉教授)

私が名市大の英語教育にかかわるようになったのは、人文社会学部が発足した1996年4月からである。
名古屋市の方針で2つの市立短大を閉じて、人文社会学部と芸術工学部を創設することになり、短大の英語教員であった久田・新井両先生と私の3名が人間科学科・現代社会学科および芸術工学部の教養英語を担当することになったのである。

国際文化学科ならびに医学部・薬学部・経済学部については、旧教養部の英語教員が担当した。発足当時の人間科学科・現代社会学科の教養英語は8科目(半期)を必修とし、「コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ」「英語リフレッシュⅠ・Ⅱ」の4単位を1年次で、「総合英語Ⅰ~Ⅳ」の4単位を2年次で履修するというものであった。

その後、4年制となった看護学部を含めた6学部統一カリキュラムを策定したり、外国人教師を5名から7名に増員するなど、様々な改革が実行された。私の専門が英語教育であり、語学部会(英語小部会)の部会長や教務委員などを務めたこともあって、そうした改革に携わってきた。

現在の教養英語の特徴は、以下の5点にまとめられる。最後の2点は他大学には見られないもので、名市大における英語教育を特色あるものにしている。

  1. 理系学部は4単位を必修とし、「コミュニケーション英語1」「コミュニケーション英語2」(スピーキング)「総合英語1」(リーディング)「総合英語2」(ライティング)を1年次に履修する。
  2. 文系学部は6単位を必修とし、「コミュニケーション英語1」「コミュニケーション英語2」(スピーキング)「総合英語1」(リスニング)「総合英語2」(ライティング)を1年次に履修し、「総合英語3」(リーディング中級)「総合英語4」(リーディング上級)を2年次に履修する(ただし、国際文化学科では「コミュニケーション英語3・4」を加えた8単位すべてを1年次で履修する)。
  3. いずれの科目も少人数クラス(20~30名)にて実施する。
  4. スピーキング科目およびライティング科目を外国人教師が担当する。その結果、理系学部では、4科目中3科目を外国人教師から学ぶことになる。
  5. 文系学部では、選択科目として「応用英語1」「応用英語2」が設定され、「TOEIC対策講座」「集中講座」など6つの講座の中から自由に選んで履修できる。

このように充実した英語教育が行われているのであるが、大学評価委員からはさらなる改革を求められている。その1つが「習熟度別クラス編成」である。英語教育の効果を上げるためには必要であり、多くの大学で実施されている、というのがその理由である。

そうした要請に対し、経済学部にて習熟度別クラスでの授業を試行したことがある。詳細は「〈コミュニケーション英語〉における習熟度別クラス編成の試み」(『人間文化研究』第10号)を見ていただきたいが、その効果を積極的に評価できる資料は得られなかった。

私自身は習熟度別クラスを導入することには反対である。学部による差はあるものの、市大生はセンター入試や前期日程での英語の試験を経ており、一定程度の英語力を身につけている。その英語力をさらに伸ばし、英語レベルで理解し表現する力をつけることが名市大における英語学習の目標となる。

また、英語に限らず、クラスに様々な人間がいることで授業が豊かなものになる。グループで討論する場合を例にとると、たとえ英語表現がつたなくても、個性的な意見がぶつかり合うことによって盛り上がる。習熟度別クラスでは効率よく授業が進むかも知れないが、そうした面白みに欠けたものになりかねない。

上記のように、名市大には望ましい英語学習を可能にするカリキュラムが整っている。それを効果的なものにするかどうかは、授業を担当する個々の教員の力量にかかっていることはもちろんであるが、最終的には、学習主体である市大生にかかっている。

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